工夫1 細い鍼と鍼(鍼先)の形
当院で使っている鍼の太さ は、0.12~0.24mmのサイズです。
髪の毛ぐらいの太さです。
写真は、
上から縫い針、当院で使用している針、髪の毛の順です。
髪の毛とほぼ同じぐらいなのがご理解いただけると思います。
そのため、痛点に当たる可能性を低くすることが出来ます。
そして、鍼の先端の形にも工夫がなされています。
針の先端は若干ですが丸みを帯びています。
この丸みがあることで、抵抗を少なくして鍼を刺していく事が出来ます。
工夫2 前揉法(ぜんじゅうほう)
なんか難しい感じの言葉ですが、簡単にいえば「鍼を刺す前に揉む(もむ)」ということです。
そうすることで、
“今からここに刺しますよ”
と、患者さんにお知らせする効果。
刺す場所の皮膚や筋肉をやわらげ、刺激に慣らすという効果があります。
また、痛みに敏感な身体の部分は指先で軽くパンパン(トントン)と叩くこともあります。
(あくまでも軽くなのでほぼ痛くないです。)
こうする事で、軽い痛みの刺激を先に入れることが出来て、鍼を刺すときの痛みを感じさせなくする効果があります。
工夫3 『鍼管(しんかん)』と『押手(おしで)』
鍼を刺すときに鍼管という道具を使います。
鍼の長さより少し短いもので、鍼をこの筒の中に入れてガイドとして使います。
(写真の半透明のプラスチックの部分が鍼管です。)
この道具を使う事で、簡単に鍼を刺すことが出来て無駄な動作も減るので、刺すことの技術的な問題で起こる痛みが減ります。
そして、実際に刺すときには、「押手」といって患者さんの皮膚に私の手を添えて鍼の入った鍼管を持ちます。
このときに私は、自分の手のひらを患者さんに大きく当てるので、その感覚(触覚・圧覚)にぼかされて、痛みの感覚(痛覚)が起こりにくくなります。(周辺抑制)
工夫4 皮膚に張りをつくる
手のひらで押手をつくるときの指先は、皮膚を軽く横に伸ばし張りをつくります。
このように皮膚に張りをつくることで、緩んだままの皮膚に刺すよりも痛みが出にくくなります。
それはなぜかを説明します。
(割れないという前提で)空気があまり入っていない風船と、パンパンに入っている風船をイメージしてください。
空気があまり入っていない風船に鍼(針)を刺そうとすると、風船のゴムが伸びて凹んでしまい、なかなか中に刺せないですよね。
それが人の皮膚なら、そのときに痛みが出ます。
では、空気がパンパンに入っている風船だったらどうでしょう。
(あくまでも、割れない前提です。)
鍼(針)を刺したら、凹む量が少なくすんで刺しやすいのではないでしょうか。
このぶん、痛みが出にくくなるのです。
工夫5 会話
鍼を刺すときには、患者さんとお話をしている事も多いです。
会話をしながら施術する事は、治療家として基本中の基本です。
これが出来なければ、患者さんに状態を伺いながら、治療できないということですから。
そのために私は、会話をしながらでも適切な治療箇所を探し、そこに適切に施術するという修練を重ねてきています。
中には、会話に夢中になっていて、
「いつ刺したの!?」
と、おっしゃる患者さんもおみえです。
実際に痛みがあるとしても、
「髪の毛を一本抜いた程度の痛み。」
と表現される患者さんが多い“はり治療”ですが、
当院ではこのような工夫をしながら、患者さんが痛みを感じることが無い、または少なくなるように“はり治療”を行なっています。