温かいスープをいただく。
温泉に行く。
春のポカポカしたお日様に当たる。
身体が温まると、心地よくリラックスできますよね。
お灸治療。
この治療法も“ポカポカして気持ちいい”というものです。
この治療から得られるリラックスした感覚は、自律神経失調症やうつ状態にとても良い効果を発揮します。
ですが、お灸治療には様々な誤解があります。
まず、誤解を解こうと思います。
背中に“デッカイお灸”をのせて、
「う゛っ~~」
「ぎゃ~~」
などと悶絶。
終わった後は大ヤケド。
そんなシーンをテレビ等で観たことがある方も多いと思います。(写真参照)
これは打膿灸といいますが、現在では一部のマニアックな鍼灸師しか行いません。
もちろん私もやりませんので、ご安心下さい。
また、子供の頃に、
「言うことを聞かない子は、お灸するよ!!」
などと脅され、実際にお灸をすえられた方もあるかもしれません。
これは、“ちりげの灸”といって、疳の虫(かんのむし=子供の夜鳴き、落ち着きがないなどの症状)への治療で身柱というツボへ行ないます。
精神安定の効果があります。
ですから、折檻や体罰のものではないです。
こんなイメージから、
“お灸は怖い・・・”
“お灸は熱い・・・”
“お灸はヤケドする・・・”
と思っている方も多いです。。。
これは、
悲しいことです。
なぜなら、
お灸はすごく効果があります。
それが分かってきたので、世の中では
“お灸女子”
という言葉も生まれ流行しています。
本屋さんに行けば、写真のようなお灸に関する本もたくさん出ています。
それでも、やっぱり怖いという方に、当院で行っている「心地いいお灸 8つの工夫」をご説明させていただきます。
1、お灸の大きさ
当院のお灸の種類は大きく分けて2種類です。
あらかじめ形ができている
“せんねん灸”
などのタイプ(写真右側)。
私がもぐさをひねって、
形を作るタイプです(写真左側)。
ひねって形を作るタイプの大きさは、写真ぐらいの大きさです。
いかがですか?
すごく小さいのが、分かっていただけると思います。
これは“半米粒大”といいまして、お米の半分の大きさです。
大きすぎると熱過ぎて心地良くないです。
だから、当院では技術を発揮して、小さなお灸をおこないます
2、“灸点紙”
半米粒大 のお灸。
それを“灸点紙”という熱の緩和紙の上に乗せてお灸をします。
この灸点紙を使う事で、
・皮膚のヤケドの防止
・心地いい熱量の調節
が、より完璧なものとなります。
こういった“道具”を使うことは、邪道であるという向きもあるようですが、私にとってはそんなの関係ありません。
治療家として、患者さんに必要以上の負担をかけることは避けねばなりません。
醜いヤケドのあとを残すなんてことは私の主義に反します。
そんな事をしなくても、効果を引き出す事は可能です。
私は自分のやりたい治療ではなく、患者さんの心と身体が求める治療をします。
なぜなら、それが一番効果的な治療法だからです。
3、もぐさの硬さ
ひねるタイプのお灸は、フワフワのもぐさをつまみ上げこねて(ひねって)作ります。
こねて先端が尖ったように形を作ります。
それをつまんで、身体の上に乗せます。
乗せたもぐさに火をつけます。
このようにハンドメイドで行なうひねるタイプのお灸ですが、ひねりの硬さによって熱さが違います。
柔らかくひねれば、温度が低くなり、熱さを感じる時間は短くなります。
逆に、硬くひねれば、温度は高くなり、熱さを感じる時間は長くなります。
当然、硬くひねれば、灸点紙の上とはいえ、ヤケドのリスクも上がります。
患者さんにお一人おひとり、熱さへの好みが違います。
当院では、それをお伺いして、こういった細かい技術を駆使し、リスクを最小にしながら患者さんのお好みに合わせ、温度、時間を調節してお灸を行ないます。
4、知熱灸(8分灸)
この方法は、患者さんの心地いい感覚に近づけやすいので使う事も多いです。
まず、皮膚にひねったタイプのもぐさを乗せます。
線香で火をつけます。
もぐさが燃えます。
そして8分ほど燃えたタイミングで親指と人差し指で、被うようにして酸欠状態を作って消します。
このような方法を知熱灸といいます。
また、8分ぐらい燃えた所で消すので8分灸ともいいます。
ヤケドのリスクも少なく、ほぼ一定で優しい感覚のお灸になりますので、ご高齢の方、女性、お子様に使用することが多いです。
5、台座灸(せんねん灸)
当院では、市販のものとして販売されている、あらかじめ形が出来ているお灸も使います。
一般的には“せんねん灸”と呼ばれますが、これは商品名です。
お灸の種類として、台座灸といいます。
ジワーっと温かくなるお灸になります。
もし熱ければ、お声かけいただき取り除いてしまうので、心地良いです。
6、棒灸と温灸器
お灸の種類に棒灸というものがあります。
この先端に火をつけて使います。
使い方の基本はツボに対して、
近づけたり
離したり
を繰り返す方法です。
じわーっと奥まで熱が入る感じがします。
また、
経絡という気の流れの道筋に沿って、スライドさせる方法があります。
これを繰り返していると、何ともいえない温かさに身体が包まれてきます。
また、この棒灸を温灸器といわれる器具に取り付け、温めたい部位に置いて、持続的に温めるという方法をおこなう事もあります。
写真では足の甲に置いていますが、私の治療では首の付け根や腰に持続的に置くことが多いです。
すると、多くの患者さんは気持ち良さそうに寝てしまう事が多いです。
この方法は、ヤケドのリスクは殆どないです。
リスクが少ないうえに、とても効果的です。
7、隔物灸(かくぶつきゅう)(塩灸・ショウガ灸)
隔物灸とは、読んで字のごとく“物を隔てたお灸”という意味です。
もぐさを直接皮膚の上で燃やすのではなく、もぐさと皮膚の間に物を入れて行う方法です。
当院で行なう方法は2つ。
しょうが灸と塩灸です。
スライスした“しょうが”や塩の上にもぐさを置いて行ないます。
この方法は、点でツボを刺激するというよりも、面で温めるイメージになります。
たとえば写真のように膝に乗せて火をつけます。
どんどんもぐさが燃えていき、しっかり温まると赤みを帯びます。
この間、患者さんは熱いということはなく、
「ぽかぽかして気持ちいい~!!」
とおっしゃいます。
お腹などにおこなうことも多いです。
しょうがには、温める作用や、消炎作用があり、痛みをとったり、むくみをとったりする効果があります。
また、塩灸は、お腹や骨盤、首の付け根に使うことが多いです。
古典(霊枢という大昔の書物)に“陥下に灸(陥下則灸之)”という記載があります。
おへそは、人体でもっとも陥下(凹み)しているところです。
神闕(しんけつ)という名前のツボでもあります。
(治療にとっても重要なツボです。)
このように、おへそにお灸をすると、お腹の中がポカポカして、とっても心地いいです。
(しょうが灸でおこなう事もあります。)
8、灸頭鍼
灸頭鍼は、鍼との合体技となります。
鍼の頭にお灸をつけて、鍼の効果と、お灸の輻射熱による温熱効果を同時に得ようとする方法です。
当院で使っている道具は二種類。
1、もぐさを紙でロール状に巻いたもの。
2、炭によるもの。
炭のタイプは、もぐさに比べて温かい時間が長いので、ゆっくり温めたい場合はこちらを使います。
温まった効果として、皮膚が赤くなります。
灸頭鍼は、鍼の効果に加え、じんわーり身体が温まって身体がゆるんでいきます。
自律神経失調症やうつ状態の方は、
・腰痛や肩こり、
・下痢、
・冷え
などの症状を併発している方が多いです。
そんな症状をお持ちの方に、灸頭鍼を使います。
当院ではこのように、様々な工夫と材料を用いて効果の高い心地良いお灸を行っております。